約 1,869,270 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/57387.html
アスクラボール アーサー王伝説の登場人物。 円卓の騎士の一。 関連: パロミデス (息子) セグワリデス (息子) サフィール (息子) 別名: エスクラボル
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9140.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第四十六話「トリスタニアの奇跡」 地獄星人ヒッポリト星人 暴君怪獣タイラント 宇宙大怪獣アストロモンス 宇宙大怪獣改造ベムスター 光熱怪獣キーラ 宇宙スパーク大怪獣バゾブ 登場 トリステイン女王アンリエッタの、突然の失踪。それは内通者リッシュモンをあぶり出すために 仕掛けた、アンリエッタの罠であった。しかしリッシュモンは既にヒッポリト星人に魂を売り渡しており、 卑劣にも故郷トリステインを焼き払うためにネオパンドンを呼び出した。その危機に立ち向かったのは、 我らがウルトラマンゼロ。彼は改造により戦闘力が上昇したネオパンドンをも打ち倒した。 しかし、ヒッポリト星人の計画はそこで終わりではなかったのだ。ネオパンドンを倒したばかりのゼロに、 タイラントを筆頭とした宇宙大怪獣軍団が襲い掛かる。ゼロの窮地にウルティメイトフォースゼロが 駆けつけたのだが、それこそがヒッポリト星人の狙い。ウルティメイトフォースゼロは隙を突かれ、 全員ヒッポリトカプセルの中に閉じ込められてしまった! このままではゼロたちがブロンズ像に変えられ、トリステインは壊滅してしまう。これを救えるのは ルイズだけだが、そのルイズにも、侵略者の手先となり果てたリッシュモンの魔の手が伸びていた。 危うし、ルイズ! 『グワハハハハハ! 怪獣どもよ、もっと暴れろぉ! 街を地獄に変えるのだぁーッ!』 ヒッポリト星人の命令により、五大怪獣がトリスタニアで大暴れする。 「キイイイイィィィィッ!」 ウルティメイトフォースゼロが閉じ込められて手が出せないのをいいことに、タイラントは 口から爆炎を吐き、家々を片っ端から爆破、炎上させる。 「くそッ! やめろぉッ!」 「キュイイイイイイ!」 怪獣たちの猛威をどうにか食い止めようと奮闘している魔法衛士隊だったが、キーラが彼らに閃光を浴びせる。 「うわああああ―――――――!?」 騎士と飛竜、どちらも視界を潰され、大多数の騎士が落とされてしまった。 「カ―――ギ―――――!」 竜騎士たちが羽虫のようにボトボトと落ちる様を背景に、改造ベムスターは腹の口で家屋をもぎ取り、 そのまま呑み込んだ。ベムスターは腹の口で、どんなものでも捕食してしまうのだ。 「キイイィィィ!」 アストロモンスは花より消化液を噴出し、街の一画をドロドロに溶かす。 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 バゾブは電撃光線で、広範囲を一気に焼き払った。 「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――!」 「助けてぇぇぇぇぇぇぇッ!」 「ト、トリステインはもう駄目なのか!?」 人々は怪獣の猛威になす術なく、逃げ惑うばかり。だが五体もの怪獣に追い回されて、 どこまで逃げられるだろうか。どんどん逃げ場はなくなっていく。 『くっそぉッ! あんな奴らの好きにさせたままだなんて! このッ! このぉッ!』 ゼロは人々を踏みにじる邪悪なヒッポリト星人の軍団と、あっさりと罠に嵌まって無力化された 不甲斐ない自分への怒りをカプセルにぶつけるが、やはりヒッポリトカプセルが壊れる気配は 微塵もなかった。そうしている内にも、ヒッポリトタールによって身体が徐々に固まっていく。 焦るグレンファイヤーたち。 『や、やべぇッ! このまんまじゃ、みんなお陀仏だぜ! くっそぉ、またブロンズ像化は嫌だぞッ!』 『しかし……最早打つ手がありません……!』 『くッ! 万事休すか……!?』 『無駄だ無駄だぁッ! お前たちに出来ることは、もう死ぬことだけなのだぁッ! フハハハハハハハッ!』 必死にあがくゼロたちを、ヒッポリト星人が余裕綽々の態度で嘲笑した。 「くッ……もう時間が……!」 地上からルイズが、だんだんと固められていくゼロたちを見上げて、彼らと同じように焦燥していた。 しかし目の前のリッシュモンが杖を向けていては、彼らを助けられない。 「無駄な抵抗をするな。私としても、女子供を無用に痛めつけたくはない」 うそぶくリッシュモンに、ルイズは鋭い視線を飛ばす。 「リッシュモン! 貴族の誇りを捨て、祖国を裏切って、恥ずかしいと思わないの!? 曲がりなりにも 上流貴族でしょう!」 と非難するも、リッシュモンは鼻で笑うばかり。 「フフフ、実に子供らしい青臭い台詞だな。誇りと愛国心で財産を得られ、甘い蜜が吸えるのならば、 私もそうしようではないか」 「……貴族の風上にも置けない下衆ねッ……!」 嫌悪感を剥き出しにするルイズだが、だからと何かが出来る訳ではない。呪文が長い『虚無』の魔法では、 既に呪文を完成させているリッシュモンにどうあがいても速さで勝てない。 (トリステインもわたしも、ゼロたちも、サイトも……こんなところで終わりなの!?) 絶望感に目の前が暗くなりかけた、その時のことである。 突然上から、誰かが自分とリッシュモンの間に降り立ち、リッシュモンに銃を向けた。 すぐ側の家の窓から飛び降りてきたようだ。 この事態に、リッシュモンのみならずルイズも驚く。 「えッ!?」 「ラ・ヴァリエール殿。早くお逃げを」 リッシュモンから目を離さないまま、ルイズを助けに入った、アニエスがそう告げた。 我に返ったルイズは、すぐにその言葉に従った。 「ありがとうッ!」 短く礼を告げて、全速力でリッシュモンと反対方向、ゼロたちの方へと走っていった。 リッシュモンは忌々しくアニエスをにらみつける。 「貴様か……。余計な真似を」 リッシュモンは既にアニエスと顔を合わせていた。彼女が平民であることはもう知っている。 そのため、最初から舐めて掛かっていた。 「どけ。私には、貴様を殺す手間を掛ける暇もないのだ。私は既に魔法を解放するだけだし、 銃などこの距離ならば当たらぬぞ。とっとと去ねい。平民が、命を捨ててまでアンリエッタに 忠誠を誓う義理などあるまい」 ゴミを見るような目で脅しを掛けるが、アニエスは一歩も動かない。逆に、目に憎悪を宿して リッシュモンをにらみ返した。 「私が貴様を殺すのは、陛下への忠誠からではない。私怨だ」 「私怨?」 「ダングルテール」 そのひと言だけで、リッシュモンは理解したようだった。下卑た笑みを浮かべる。 「貴様、あの村の生き残りだったか!」 アニエスは唇をぎりっと噛み締めた。唇が切れて血が流れる。 「ロマリアの異端諮問“異教徒狩り”。貴様がわが故郷が“新教徒”というだけで反乱をでっちあげ、 今この時と同じように踏み潰した。その見返りにロマリアの宗教庁からいくらもらった?」 リッシュモンは唇を吊り上げた。 「金額を聞いてどうする? 賄賂の額などいちいち覚えておらぬわ」 「金しか信じておらぬのか。侵略者につけ込まれるのももっともな、あさましい男よ」 「お前が神を信じることと、私が金を愛すること、いかほどの違いがあると言うのだ? お前が死んだ肉親を 未練たっぷりに慕うことと、私が金を慕うこと、どれだけの違いがあると言うのだ?」 「殺してやる。貯めた金は、地獄で使え」 「お前ごときに貴族の技を使うのはもったいないが……、これも運命かね」 リッシュモンが呪文を解放し、杖の先から火の球がアニエスへと飛ぶ。それに対し、アニエスは……銃を投げ捨てた。 「なに?」 マントを翻して火の球を受ける。マントは一瞬で燃え尽きたが、中に仕込まれた水袋が蒸発して 火の球の威力をそいだ。だが消滅はせず、アニエスにぶつかる。 「うぉおおおおおおおおおおおッ!」 しかしアニエスは耐え、リッシュモンへ突進し続けた。そして剣を抜き放ち、リッシュモンの懐に飛び込む。 「うお……」 リッシュモンの口からは、呪文の代わりに鮮血があふれた。胸に剣が刺さり、背中から刃が飛び出ていた。 「メ……、メイジが平民ごときに……、この貴族のわたしが……、こんなおもちゃに……」 「……これはおもちゃではない」 リッシュモンから剣を引き抜くアニエス。貫通して出来た穴から、血液がごぼっとあふれ出た。 「剣は“武器”だ。我らが貴様ら貴族にせめて一かみと、磨いた牙だ」 リッシュモンの身体が崩れ落ちる。アニエスは深い火傷を負った身体を強靭な精神で支え、 死体を冷ややかに見下ろした。 アニエスがリッシュモンに裁きを下したのと前後して、彼女に助けられたルイズは改めて呪文を唱え、 ゼロたちを捕らえるカプセルへ解き放った。 「『爆発』!」 途端に四つのカプセルが閃光に呑まれた。それを目の当たりにして、ヒッポリト星人は言葉を失う。 『な、何ぃッ!? この光は……!』 光が収まると、カプセルは全て消え去り、タールも落ちたウルティメイトフォースゼロの四人が、 街の中に立っていた。青いカラータイマーを胸に光らせるゼロが、ヒッポリト星人を指差す。 『残念だったな、ヒッポリト星人……勝負はここからだぜッ!』 『ふぃ~! せまっ苦しかったぜッ!』 グレンファイヤーが肩をグルグル回して身体をほぐした。 『おのれぇ、しくじったな! やはり人間なんぞを頼ったのが間違いだった!』 一方、用意周到な作戦を破られたヒッポリト星人は激しく悔しがり、街を破壊している怪獣たちを呼び戻す。 『怪獣たちよ、早く集まれ! こうなったら総力戦だッ! 叩き潰してやるッ!』 「キイイイイィィィィッ!」 「キュイイイイイイ!」 「カ―――ギ―――――!」 「キイイィィィ!」 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 命令するヒッポリト星人の前に五大怪獣が並び、ウルティメイトフォースゼロに突撃していく。 『望むところだ! みんな、行くぜぇーッ!』 『うおおぉぉー!』 ウルティメイトフォースゼロも雄叫びを上げ、怪獣軍団と再度激突した! ゼロたちと怪獣軍団の激突を、マンティコアにまたがる魔法衛士隊隊長ド・ゼッサールは 苦々しく見守っていた。 「結局はこうなるのか……。やはり我々は、無力な存在なのか……」 ゼロたちの奇跡の復活を喜ぶ反面、本来国を守る役目を担う自分たちが怪獣に歯が立たず、 助けられてばかりというのは胸が苦しい思いだ。しかし現実として、自分たちに出来ることはない……。 思い詰めていると、一人の竜騎士が慌ただしくゼッサールの元に飛んできて、次のことを告げた。 「報告します! 王立魔法研究所(アカデミー)で開発中だった、対怪獣用兵器が完成したとのこと! また、その使用許可も下りました!」 「何!? 遂に完成したのか!」 驚くゼッサール。アカデミーはその名の通り、トリステインの魔法研究施設で、現在は相次ぐ 怪獣被害に対抗するための新兵器開発を推し進めていた。それがとうとう完成し、しかもすぐに使えるという。 それを知ると、気を落としていたゼッサールは、たちまちの内に士気を盛り返した。 「分かった! ハルケギニアは、我々人類の手で守らねばならん! すぐに使用しよう! 何回使える?」 「残念ながら、怪獣一体分が限度とのことです」 「それで十分だ。では……」 空から戦場の様子を見下ろすゼッサール。 「キイイイイィィィィッ!」 「カ―――ギ―――――!」 『うおぉぉッ!』 タイラントと改造ベムスターがゼロの前後から、腹からの冷凍ガスと光線を食らわせていた。 さすがのゼロも、挟み撃ちにされて手を焼いている。それを援護するのが最も良いと、 ゼッサールは瞬時に判断した。 「あの平たい怪獣に狙いを絞るぞ! 総員、集合せよ!」 まだ飛んでいる騎士を集めたゼッサールは、二つの新兵器の仕様を聞き出し、即座に作戦を打ち立てた。 その手筈を、全員にしっかりと伝える。 「まずは怪獣の動きを止めるところからだ。この役目は、私が引き受ける」 「隊長自ら!? 危険です!」 一人の騎士が泡を食って止めに掛かったが、ゼッサールは不敵に笑ってそれをさえぎった。 「我々が、これまで暴威を振るってきた怪獣に反旗を示す栄誉ある一番槍を、お前たち若造に 譲ってやる訳にはいかんな。……何、命だけは拾って帰るさ」 ゼッサールの言葉は、半分は本当だった。一番危険な役目を部下に任せられないという気持ちもあるが、 今度の新兵器と作戦は、平民が貴族に対抗する牙として「剣」を磨いたように、怪獣に対抗するための 自分たちの牙なのだ。それを自身の手で成功させたい。人類が決して無力な存在ではないことを、この身で示すのだ! 「万事ぬかるんじゃないぞ! では、作戦開始!」 指示を出し、ゼッサールはマンティコアを駆って改造ベムスターの頭上へ慎重に移動した。 相手がこちらに気づかない内に……その顔面に飛び移る! 「とうッ!」 命を省みない、捨て身の作戦。しかしその甲斐あり、改造ベムスターの眼球の真下に張りつくことが出来た。 そして『エア・ニードル』の呪文で、相手の下まぶたの内側を切り裂く! 「カ―――ギ―――――!!」 たちまち黄色い血が噴水のように噴き出し、改造ベムスターは激痛に耐え切れずにゼロの背後から離れた。 あらゆる攻撃を受け止める驚異の防御力を持つ怪獣といえども、身体の全てが固い訳ではない。 特に、普通ならまず攻撃が当たらないまぶたの裏はブヨブヨ。普通の刃物でも切り裂くことが出来る。 狙うのは当然非常に危険だが、その効果は十分にあった。 血が片方の目玉にベッタリ付着して、遠近感を失った改造ベムスターは立ち尽くす。そこにすかさず、 作戦の第二段階が発動した。 「怪獣め! この特製火石をたっぷりと味わえ!」 竜騎士二人が、人工的に作った巨大火石を抱え上げて、改造ベムスターへと接近していく。 これは大量の火石を、何人ものスクウェアクラスメイジが数日間休まずに作業して、一つにしたもの。 莫大な火力が石の中に眠っている、最早火石ではなく強力な「エネルギー爆弾」だ。一つ作るだけでも 手間と人員が掛かりすぎるので、人間の戦争に利用できるものではないが、怪獣相手の切り札には十分に使える。 改造ベムスターが腹から家屋を呑み込んだので、腹が口だということは理解している。 竜騎士たちは、腹の口にエネルギー爆弾を放り込んだ。 「カ―――ギ―――――!」 何でも食らうベムスターだが、爆弾のエネルギーが大きすぎるため、吸収に手間取る。 そして魔法衛士隊は、とうとう作戦の最終段階に移行した。 「これで、とどめだッ!」 ゼッサールを部下が救助すると、四匹の飛竜が改造ベムスターの正面に回った。飛龍は、金色の巨大な大砲を 吊り下げている。これこそが本命の新兵器。トリステインの魔法技術の粋を集めて作り出した、ハルケギニア史上初の光線砲である。 トリステインは、侵略者の脅威の科学力と兵器を逆利用できないものかとずっと考えていた。 そこで、ゼロたちが撃破した円盤やロボットの残骸を密かに回収し、研究していたのだ。 だが現実は甘くなく、宇宙人の科学の産物の仕組みは全く理解できなかった。しかし始祖ブリミルは、 完全に見放してはいなかったらしい。唯一キングジョーに搭載されていたビーム砲が生きていて、 連日に亘る錬金による、杖に血がにじむような努力が実って、制御することに成功したのだ。 それがこの光線砲。名前は、キングジョーから取り、『キング砲』だ! 「行くぞ! キング砲、発射ぁッ!」 竜騎士の魔法がスイッチとなり、キング砲から稲妻状の光線が発射された。光線は改造ベムスターの 腹の中の、エネルギー爆弾に命中する。 瞬時に発生する、壮絶な爆発! 改造ベムスターは身体の内側からの熱と衝撃に耐えられず、 木端微塵に吹っ飛んだ! 「やった、成功だ……! やったぞぉぉぉぉー!」 その光景を目にして、ゼッサールは大歓声を上げた。自分たちが、初めてウルトラマンたちの 手も借りずに、怪獣を撃破したのだ。 だが、仕組みを理解している訳ではないキング砲を使用できるのは、たった一回きり。 残りの怪獣たちは、ゼロたちに任せることとした。 『うおぉッ! すげぇ! 人間が大怪獣をやっつけたぜ!』 アストロモンスを抑えていたグレンファイヤーが、改造ベムスターが撃破されるところを 目撃して歓声を上げた。 『よっしゃ! 俺も負けてらんねぇぜ! うらぁぁッ!』 「キイイィィィ!」 相手の鞭の振り下ろしを受け止め、顔面にパンチを決める。アストロモンスはフラフラと後退した。 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 『むうぅッ……!』 その一方で、ジャンボットはバゾブの磁界で動きを制限されたところに、電撃光線を食らってよろめいた。 『焼き鳥、大丈夫か!? 代わろうか?』 『私はジャンボットだ! それに、その必要はない……』 『必要はないってお前、相性最悪じゃんか……』 心配するグレンファイヤーだが、ジャンボットはそれを振り払うように告げる。 『この星の人間が諦めずに戦っているのだ。私も、この程度で根を上げていられん! 見ていろッ!』 ジャンボットが突然、ブースターから火を噴いて大空に飛び上がった。バゾブは思わず目で追って見上げる。 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』 飛び上がったジャンボットはバトルアックスを構えると、バゾブの頭上からまっさかさまに 落下を開始した! 目を見張ったバゾブが逃げようとしたが、その時にはもう遅く、 ジャンボットは頭のすぐ上へと迫っていた。 機械の動きを止めるバゾブの電磁波だが、自由落下してくる物体を止めることは出来ない。 50メイルの質量のロボットの激突と、それに伴うバトルアックスの斬撃を食らったバゾブは、 頭頂部から真っ二つにされて爆散した。 『ふッ……ざっとこんなものだ』 『おおぉぉッ! お前も随分と無茶なことするなぁ焼き鳥』 『私の名前はジャンボットだと言っているだろう!』 戦闘中まで相変わらずのやり取りをしたグレンファイヤーの背後から、アストロモンスが鞭を振るう。 しかしそれを気取っていたグレンファイヤーは、その鞭をはっしと掴んだ。 『うらぁぁぁぁ―――――――!』 「キイイィィィ!」 そして豪力を発揮して、鞭ごとアストロモンスをハンマーのように振り回して投げ飛ばした。 放物線を描いて落下するアストロモンスへと駆けていくグレンファイヤー。 『ファイヤースティィック!』 炎の如意棒を出すと、頭から落ちてくるアストロモンスの花の中央にファイヤースティックを突き刺した。 それによってアストロモンスは火炎に包まれ、爆発四散した。 『うっしゃあッ! こっちもいっちょ上がりだぜ!』 怪獣を撃破したグレンファイヤーは、頭をかき上げて炎を燃え上がらせた。 『シルバークロス!』 「キュイイイイイイ!」 ミラーナイトはキーラにシルバークロスを当てたが、スペシウム光線も易々と受け止めるキーラの甲殻は、 シルバークロスでも傷一つつかなかった。そしてキーラは、まぶたを閉じて閃光発射の構えを取る。 『! はぁッ!』 ミラーナイトは、キーラが目を開けるタイミングに合わせて、自分の前面に巨大鏡を作り上げた。 「キュイイイイイイ!?」 閃光は鏡によって跳ね返り、キーラは自身の目が潰された。そして大きくひるんだキーラに、 ミラーナイトがミラーナイフを放つ。 『やッ!』 ミラーナイフは動きを止めたキーラの、わずかな甲殻の隙間に見事突き刺さった。全身にミラーナイフを 食らったキーラはダランと腕を垂らし、後ろに倒れ込んで爆散した。 『鏡作りが得意な私に、光で挑んだのが間違いでしたね』 ミラーナイトは肩をすくめて、息絶えたキーラに告げた。 「キイイイイィィィィッ!」 『うおらッ! ……くッ! しぶといな!』 最後に残った怪獣はタイラントだ。だが超獣ハンザギランの不死身に近い生命力を受け継いだタイラントは、 ストロングコロナゼロの打撃を何発も食らっても応えた様子がなかった。あらゆる怪獣の優れた点を併せ持つ 恐るべき合体怪獣を、ゼロはどうやって攻略するのか。 「キイイイイィィィィッ!」 タイラントは再びゼロの首を締めようと、フックつきロープを飛ばす。 『同じ手食らうかよ!』 だがその攻撃を見切っていたゼロは、ロープをはっしと掴んだ。 この時、ゼロに名案が浮かぶ。 『この手で行くぜ! ぜあぁッ!』 早速作戦を実行するゼロ。額からエメリウムスラッシュを発射して、掴んだロープを焼き切る。 「キイイイイィィィィッ!」 引っ張っていたロープがいきなり切れたことで、タイラントはバランスを崩して背後に倒れ込んだ。 相手が起き上がらない内に、ゼロはルナミラクルへと再変身した。 『行くぜ! ウルトラゼロランスだぁッ!』 フックを掲げたゼロは、ルナミラクルの超能力とブレスレットの力により、それをウルトラゼロランスに変えた。 そして、タイラントへと投擲! フックを変えたランスには、タイラントのパワーが上乗せさせる形で宿っている。そのパワーが、 タイラントの生命力を相殺する! 「キイイイイィィィィッ!」 ランスが腹部に深々と突き刺さったタイラントは、大爆発を起こして塵も残さず消え去った。 『なッ!? ば、馬鹿な! 私が選りすぐった大怪獣軍団が、全滅だとぉ!?』 怪獣たちを全て失ったヒッポリト星人は大いに動揺する。その彼に、通常状態に戻ったゼロが 指を向けて言い放った。 『残るはお前だけだ! もう観念しろ! 人間を舐め切ったテメェの負けだぜ!』 高々と告げるも、ヒッポリト星人は負けを認めず、逆上した。 『黙れぇッ! この偉大なるヒッポリト星人が、貴様ら如きに敗北するはずがないッ!』 頭部の突起や両眼、両手などあらゆる箇所からビーム、ミサイルを乱射して、ウルティメイトフォースゼロを 狙い撃ちにする。 『うおおぉぉぉッ!』 『くッ! あくまで悪あがきしますか……!』 『見苦しいぜッ!』 ゼロたちは弾幕によって動きを縛りつけられる。しかしここに来てヒッポリト星人は、 人間の力を度外視していた。 「これで最後だ! 十文字作戦ッ! あの突起を狙うんだ!」 魔法衛士隊が残った力を出し切って、頭頂部の突起に十字砲火を浴びせた。 「キョオオオオオオオオ!」 発光部に魔法の集中攻撃を食らったヒッポリト星人が麻痺した。その隙に、ウルティメイトフォースゼロの 一斉攻撃が放たれる! 「シャッ! シェアァッ!」 『シルバークロス!』 『ビームエメラルド!』 『グレンスパァーク!』 ワイドゼロショットを始めとした、四人の必殺技が命中。ヒッポリト星人は跡形もなく木端微塵になった。 「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!」 怪獣軍団の首魁を倒したことで、ハルケギニア中の人々が割れんばかりの歓声を発した。 魔法衛士隊には、ゼロたちが大きく手を振る。 「隊長、見て下さい! あれはきっと、私たちへの感謝と友好の印ですよ!」 「うむ……我々はとうとう成し遂げたのだ。彼らと戦場で並び立つことを……!」 ド・ゼッサール隊長を始めとした魔法衛士隊は、胸がいっぱいになっていた。 「姫さま!」 「ルイズ! 無事でしたか!」 アンリエッタを見つけて、駆けつけたルイズは、弾んだ声で彼女に尋ねる。 「姫さま、ご覧になりましたか? 大勝利です! それだけじゃない。トリステインの騎士が、 怪獣を討ち取りました!」 「ええ、ええ。よく見ていましたとも」 二人も、大勢の人間と同じように、人間が怪獣から勝利をもぎ取ったことに歓喜で打ち震えていた。 アンリエッタは、小さくつぶやく。 「わたくしたちは、無力ではなかった。グレン、見ていてくれましたか……」 そしてルイズは、アンリエッタたちを先ほど助けてもらったアニエスのところへ案内し出した。 ハルケギニアの人間が、長きに亘る苦難の果てに、ウルトラマンゼロたちと肩を並べて戦い、 大怪獣と侵略者に勝利したこの戦いは後に、『トリスタニアの奇跡』と称されることになるのである。 その奇跡に街中が湧く中で、アニエスは傷ついた身体を抱えていた。彼女だけは、他の人間と異なり、 その目に憎悪をたぎらせたままであった。 「……ここで、死んでたまるか。まだ、実行犯が残っている……!」 ダングルテール虐殺の計画者、リッシュモンは討った。しかし、虐殺の実行犯がまだどこかに 生きているはずだ。それを抹殺して、ようやく復讐は完遂される。 アニエスは暗い情熱の力により、その身体を支えていた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/6992.html
autolink() PD/S22-082 カード名:初音ミク“SW みずたまビキニ” カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:1 トリガー:1 パワー:2000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《水着》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+X。Xはあなたの「応援」を持つキャラの枚数×500に等しい。 【起】[①]あなたは自分の《音楽》?のキャラを1枚選び、次の相手のターンの終わりまで、パワーを+1000。 レアリティ:R SR illust. 13/03/18 今日のカード。 サマーアイドルのミク側の対応モジュールだがシナジーはない。ノエル・ルージュ?と同じキャラ数応援持ち。 ノエル・ルージュはレストして1キャラにそのターン中+1000だったが、こちらは1コストで相手のターン終了まで1キャラに+1000する 相手のターンの終わりまで持続するので踏み返される可能性が少しだけ減る。当然複数乗せも可能。 相方の鏡音リン“SW しましまビキニ”とは効果と色の都合上共存させられないのが残念である。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1887.html
夜空を埋め尽くさんばかりの大艦隊。 その周囲を哨戒しているのは数多の竜騎士。 地上においても兵士が網の目のように張り巡らされている。 ギーシュが望遠鏡で覗き込むのは、何万という大軍によって包囲されたニューカッスル城。 自身の経験、知識と照らし合わせて城への進入経路を探す。 そして彼はそこから最適の結論を導き出した。 「……よし、帰ろう」 弱音を吐いた瞬間、彼の後頭部に鈍痛が走る。 ギーシュが振り返ると、そこには石を持ったキュルケの姿があった。 “何て物で殴るんだ、この女は”と非難めいた目線で彼が涙ぐむ。 それを気にする事も無く、石を捨ててキュルケは怒鳴った。 「バカ言わないでよ! ここまで来て引き下がれるものですか!」 ぴんと立てた人差し指でギーシュの胸を突付く。 彼女の覚悟はとっくに固まっている。 そうでなければシルフィードでアルビオンに行こうとは思わないだろう。 そして、キュルケに続くようにタバサも口を開いた。 「それにルイズが危ない」 彼女は既にワルド子爵が反逆者という事を嗅ぎ付けていた。 内と外に敵を抱えた状態では脱出さえも不可能。 今にも砲火を交えかねない両者を睨みながら焦りを押し殺す。 あの後、フーケ退治の祝いという事で彼女達は宴に招かれた。 連れて行かれたのは『女神の杵』という貴族専用の宿。 そこの主人が気前良く場所を提供してくれるという。 今すぐにでもルイズ達を追いかけたのは山々だったが、 さすがにフーケを相手にして心身共に疲労していた。 せっかくの厚意を断るのもなんだし、休憩を兼ねて彼女達は誘いを受けた。 そして辿り着いた高級宿は荒れ果てていた。 テーブルは倒され、幾重にも矢が突き刺さっていた。 同様に床もそこかしこに矢が刺さり、辺り一面が血に染まっている。 更に壁には弾痕。まるで戦場跡を思わせる光景に一同言葉を失った。 そして、その惨状の中心で酒を煽る一人の酔っ払い。 状況説明を求める店主達を無視し、そいつは酒を飲み続ける。 その態度に激昂した一人が襟首を掴むも引き剥がす。 「うるさい、うるさい、うるさーい! 僕は客だぞ! 好きに飲ませないって言うのか!?」 雄叫びを上げて酔っ払いが立ち上がり、そして転倒した。 支離滅裂な言動に主人達も呆れ果てる。 だが状況を見る限り、男が関わっている事は確かだ。 衛兵にでも突き出すかと相談する人垣から、ひょこりと二人が顔を覗かせる。 そして酔っ払いの寝顔に、彼女達の目が丸くなった。 そこにいたのはギーシュだった。 ルイズ達を追跡する為の手掛かりを発見し、猛禽類の如く目を光らせる。 しかし、このままでは確実にお縄となってしまう。 そして事情を話せないとなれば長期拘留は確定だ。 かといって知り合いだと言ったら弁償しなければならないかもしれない。 だがキュルケはそんな事で怯む女ではない。 むしろ障害が多ければ多いほど彼女は燃えるのだ。 人だかりを押し退けてキュルケはギーシュの下へとツカツカと歩む。 何事かとざわめく群衆の中、彼女はギーシュに爪先で蹴りを入れた。 無論、当たる直前で勢いを殺した上でだ。 しかし、痛がり屋のギーシュから漏れる嗚咽に一同が震え上がる。 「酒に溺れて暴れ回るなんて貴族の屑ね、ここで死んだ方がいいわ」 そう言いながらキュルケは倒れたギーシュを踏み躙る。 勿論、乗せた足に体重は掛けていない。 平民ならまだしも貴族を足蹴にするキュルケに彼等は完全に凍りついた。 「ねえ、そこの貴方」 「は、はい! 何でしょうか!?」 びくりと身を震わせながら主人はキュルケに応じる。 彼を見据える視線は冷酷で人としての情など感じられない。 逆らえば自分もどうなるか分からない。 ただひたすらに怯える彼にキュルケは言い放った。 「衛兵に渡す? 何を生温い事を。 他の貴族達の顔に泥を塗った彼には相応の罰が必要よ」 「と言いますと?」 「決まっているわ。私の家に連れて帰って拷問に掛けるのよ。 生皮を剥いで爪を毟り取って七日七晩塩に漬けるの。 自分から殺してくださいって口にするまで徹底的にね」 ぶるりと自分の身を震わせながらキュルケは告げた。 彼女の頬は興奮によって朱に染まっていた。 艶やかな唇を舐め取りながら浮かぶ妖しげな色気。 その姿を見た群集はギーシュを憐れみに満ちた眼差しで見下ろす。 まるで屠殺場に運ばれる豚を見るかのように。 「それじゃあ私はコイツを貰っていきますので、宴は皆さんだけで愉しんでくださいな」 そう言うなり、さっさとギーシュをレビテーションで運び去った。 残されたラ・ロシェールの人々はポカンと口を開けたまま、 酔っ払いを攫っていく赤い髪の少女達を見送る。 後に彼等はこの日の事を『正に嵐のような一夜でした』と語った…。 「さあ、もう大丈夫よギーシュ。 私のおかげで助かったんだから感謝しなさいよ」 宿から少し離れた場所でキュルケは彼を下ろした。 未だに群集に捕らえられる事を恐れているのか、 怯える彼を得意の笑顔で落ち着かせる。 我ながら完璧な妖精のような微笑み。 しかし、それは逆効果だった。 「ぎゃー! 生爪を剥がされるー!」 「だから、それはあの場を切り抜ける為の方便で…」 「塩漬けだけは! 塩漬けだけはお許しを!」 「人の話を聞きなさいよ!」 「い、命ばかりはお助けを! 学院に残した三人のガールフレンドが僕の帰りを待って…」 キュルケに土下座し喚き散らすギーシュ。 いつの間にか、その背後にはタバサが回り込んでいた。 そして一言だけ告げると彼を井戸へと突き落とす。 「うるさい」 あああぁぁぁ…という残響音の後に水柱が上がった。 その横で平然と読書に耽る親友の姿を目にし、 キュルケは空恐ろしい物を感じていた。 井戸から引き上げられたギーシュは完全に酔いを醒ましていた。 どうやらキュルケの言動が彼のトラウマに触れてしまったらしい。 だが、それも冷たい井戸水を浴びた事で戻ったようだ。 さっそく追跡を再開しようとする彼女達を彼は止めた。 「今行っても足手纏いになるだけさ。 だって彼に加えて魔法衛士隊の隊長までいるんだ。 精神力も使い切った僕達なんか必要ないよ」 アニエスを行かせたのは彼女の功績にする為だ。 大した実力も無いのに命懸けでアルビオンに行く気はなかった。 しかし彼の言葉にタバサは反応を示した。 『血で描かれた不名誉印』 『森の上空で見かけた不審な影』 そして『巨大な獣に引き裂かれたような痕』 もし、その隊長が裏切り者だとすれば全てが符合する。 突如としてタバサの背筋に走る悪寒。 幾度もの死線で鍛え抜かれた直感が危機を知らしていた。 口笛を吹き鳴らし、彼女はシルフィードを呼んだ。 もはや一刻の猶予も無い。 彼女達を乗せた竜はアルビオン目指し夜空を舞う。 それが丸一日前の出来事。 アルビオンに到着した彼等は貴族派から身を潜め、 ひっそりとニューカッスル城が一望できる丘に辿り着いた。 ここまで発見されずに来れた時点で奇跡。 そして城に入るにはもう一段階上の奇跡が必要となる。 そんな事、始祖でもなければ叶いはしない。 シルフィードだって瞬く間に撃墜されるだろう。 諦観したギーシュの顔を、キュルケが地面に押し付ける。 「何の為にアンタをここまで連れてきたと思ってるのよ!? いくら敵の数がいても地下までは目が届かないでしょ! アンタの使い魔にトンネル掘らせて地下から行くのよ!」 「それこそ無茶だ!」 ぷはっと土から顔を上げてギーシュが反論する。 彼だって自分の使い魔の事を忘れるほどアレではない。 地面の下から行く方法だって考えた。 しかし、アルビオンは内部に無数の空洞を持つ浮遊大陸だ。 もし運悪く掘削中にその空洞を掘り当てたらどうなるか。 当然、トンネルは崩壊し落下する事になるだろう。 空洞の大きさ次第では地面に叩き付けられて重傷、 最悪の場合は空に放り出される可能性だってあるのだ。 トンネルの距離が伸びれば伸びる程、その危険性は増していく。 何の障害にも当たらずに城まで辿り着くなど、 兵士の合間を縫って歩くのと何ら変わらないのだ。 「…ごめん」 激昂するギーシュに彼女は謝った。 そこから辛そうに彼は目線を外す。 もし危険性を知っていたとしてもヴェルダンデが彼女の使い魔なら行かせただろう。 だけど、他人のパートナーに命を賭けろとは言えない。 自分達だけが安全な場所から指示を飛ばすなど出来ない。 だから、彼女は謝罪を口にした。 全ての人間が自分と同じ考えではない。 それを押し付ける事こそ彼女は嫌ったのだ。 俯きながら彼は別の手段を模索する。 それ以外に方法は無いと分かっていても暗中に光を求めた。 ギーシュはヴェルダンデの事を良く知っていた。 ジャイアントモール、恐らく使い魔としては風竜にも劣らない。 城壁さえも地下から打ち崩せるし、トンネルを使った移動には何度も助けられた。 だが、唯一の欠点はその臆病な性格だ。 地面に潜り戦いを避ける事が多かった所為だろうか、 落とし穴を掘って戦えた筈なのにフーケの時も宿の時もそれをしなかった。 使い魔は主に似たものが呼ばれると言うが、 ヴェルダンデの心の弱さは僕が持つそれと同じだ。 例え、命令されても動かないだろう。 そう思っていた彼の前で一際大きな砂煙が上がった。 見ればヴェルダンデが土を掻き分けて穴を掘っていた。 主に命じられる事も無く、ひたすらに土砂を穿り出す。 地中で生涯を過ごしているのだ、当然ここを掘るのが危険だと知っている。 だけど行かなければ仲間達が危機に晒される。 振り絞った微かな勇気で恐怖を振り払う。 自分よりも小さな戦友、彼の姿が目蓋に焼き付いている。 土塊の巨人にも群がる傭兵達にも恐れる事無く、彼は立ち向かった。 そこにヴェルダンデは彼の内に秘めた勇気を見つけた。 そして、それは自分の主人であるギーシュにさえも変革をもたらした。 以前なら自ら進んで、フーケや傭兵達と戦おうとしなかっただろう。 だがギーシュは今、怯えながらも恐怖に立ち向かっている。 それに応えられずして何が使い魔だ! 主人が変われたというなら自分だって変われる筈! いや、今こそ生まれ変わるのだ! この無駄に大きい体のどこかに必ず勇気が詰まっている!、 「ヴェルダンデ!」 文字通り暗中に道を切り開く己が使い魔にギーシュが叫ぶ。 それに驚いて舞い上がる砂煙はピタリと止んだ。 手の止まったヴェルダンデに歩み寄って、 彼はキツ過ぎない様に使い魔の体に縄を結んだ。 よく見れば、その端はギーシュの体に結ばれた縄に繋がっていた。 「命綱だ。もし君が落ちそうになったら僕が支える。 もし、君が助からないような状況だとしても君一人で逝かせはしない。 主は使い魔と運命を共にする者、契約は口約束なんかじゃない」 主の言葉を聞き遂げて再びヴェルダンデは地中を掘り進む。 地面を抉る前足に恐怖はない。 この先に繋がっているのは奈落なんかじゃない。 見えない闇に恐れなど感じない。 城に無事に辿り着くのは奇跡? それがどうした。 それ以上の奇跡を自分は知っている。 ギーシュと出会えた奇跡、それに勝る物など有りはしない。 そんな当てにならない確率なんかに惑わされない。 目の前の見えない栄光、それに向かってヴェルダンデは突き進んだ…! 縄をシルフィードに括りつければいいと、 彼等が気付いたのはそれから十分後の事だった。 「結婚式…こんな時にかい?」 「こんな時だからこそです、陛下。 生きて帰れるか判らぬ決戦だからこそ思い残さぬように」 突然のワルドの発言に困惑していたウェールズだが、確かにワルドの言う事にも一理ある。 しかし、二人がそのような仲だったとは知らなかった。 何しろルイズは自分の前でそんな素振りを見せなかったのだから。 まあ愛する者同士が結ばれるというなら、喜んで祝福しよう。 それが叶わない身だからこそ、彼は自分の事のように思えるのだ。 「おめでとうミス・ヴァリエール」 ウェールズは少女の決断に微笑みで応えた。 しかし彼女は何の反応も示さず、自分が見えているかも危うい。 快活であった少女の面影など何処にも無い。 不審に思うウェールズにワルドは弁明する。 「結婚式を前に緊張しているのです、心配ありません。 ……そうだろう、ルイズ?」 「はい」 ワルドの問い掛けに彼女は応じる。 それに加えて、決戦を前にしている事もあるのだろう。 そして彼女の使い魔も未だに行方が知れない。 先行きが不安になるのも仕方ない事かもしれない。 彼女には誰か支える人間が必要なのだ。 それをワルド子爵が担ってくれるなら彼女にとっても幸いだ。 「分かった、私が立会人を務めよう。 アンリエッタの親友と客人からのお願いだ、無碍に断れまい。 他の者は手が離せないから少々寂しくなるが、構わないかね?」 「陛下さえいてくだされば、それで十分です」 「では準備に取り掛かろう。 しばらく時間が掛かるが、それまで彼女の気を和らげてあげるといい」 「数々のご配慮、痛み入ります」 礼を告げてワルドはその場を立ち去った。 彼も緊張しているのか、どこか態度が余所余所しい。 まるで劇を演じているかのようにさえ思える。 “支えが必要なのは、彼女だけはないか” そう思いながらも二人の前途に幸せがあらん事をと祈る。 「待て!」 中庭を並んで歩くワルド達の背に声が投げ掛けられた。 振り返ると、そこには息を切らせたアニエスがいた。 まるで興味無さげに視線を向けるワルドを無視し、彼女はルイズに怒鳴る。 「結婚式とはどういう事だ! アイツを探さなくていいのか!?」 その言葉に彼女は何の反応を示さない。 アニエスを見る彼女の瞳は空虚なものだった。 答えようともしないルイズの態度に、アニエスが歯を鳴らす。 掴み掛かろうとする彼女とルイズの間にワルドが割って入る。 「いいかげんにしないか! 彼女は疲れているんだ!」 それは諭すような言い方だったが、彼の手は杖に掛かっていた。 近付けば容赦なく斬り殺すという明確な意思表示。 だが、構う事無くアニエスは歩み寄る。 「おまえにとってアイツは大切じゃないのか!? 一緒に戦ってきた仲間じゃないのか!? それとも只の道具に過ぎないというのか!? どうした! 違うなら違うと言ってみせろ!」 叫ぶアニエスの声が届いていないのか、ルイズは表情一つ変えはしない。 ワルドの口元で呟くように詠唱を始める。 しかし、彼等の前方から巡回中の兵達がやって来るのが見えた。 僅かに舌打ちすると、ワルドは彼等に向かって叫んだ。 「その平民を取り押さえろ!」 きょとんとする彼等の前には、貴族の淑女に掴み掛かる女兵士の姿があった。 それは伝統を重んじるアルビオン王国からは考えられない暴挙。 咄嗟に彼女を抑えつけて、その場に組み伏せる。 事が終わったのを見届けてワルドはルイズを連れて立ち去ろうとした。 しかし、アニエスは地面に這い蹲りながら叫び続ける。 「私の問いに答えろ! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 ワルドの表情に苛立ちが浮かぶ。 平民の分際で煩わしい事、この上ない。 そんなにも納得できないというのならさせてやろう。 彼はルイズの耳元で何事か囁いた。 それを受けて彼女はアニエスの方へと振り返る。 そして彼女に向けてルイズは言い放った。 「使い魔は…只の道具よ。アニエス」 それをアニエスは聞き取れなかった。 ルイズがそんな事を言うとは思えなかったからだ。 だけど判ってしまった。 今の彼女は自分の使い魔の事など、どうでもいいのだと。 「さあ気が済んだだろう。二度と僕達には近付かないでくれ」 ワルドに肩を叩かれて彼女は去っていった。 その後姿を見上げるようにして見つめる。 遠くなっていくルイズの姿に、ただ悔しくて涙が溢れた。 この場にいない、彼の分まで彼女は泣いた。 何故、こうも彼女が変わってしまったのか。 その問いに答える者はいない。 だが、降り注ぐ月の光は彼女に味方した。 視線の先で月明かりを反射して輝く何か。 それは小さな硝子の欠片。 ただ歩いていたのでは気付かなかっただろう。 地面を這い蹲って初めて見えるようになる。 砕けてはいるが描かれた曲線は、それが瓶であった事を告げる。 そして、彼女は思い出した。 ワルド子爵がここで彼女に酒を飲ませた事を。 「っ……!」 腕を伸ばして彼女は破片を握り締めた。 手の内から流れ落ちる自身の血。 それに構う事なく彼女は拳に力を込める。 そうでもしなければ彼女は耐える事が出来なかったのだ。 胸中より溢れる、この焼き尽くすような怒りを…! 「ふぅ…」 ワルドは安堵の溜息を漏らす。 不愉快だったがアニエスを排除できたのは幸運だった。 もし、結婚式に参加するとしたら彼女ぐらいだ。 その場でウェールズを暗殺するつもりのワルドにとっては、 障害の一つと成り得る存在だった。 自分に風が吹いてきているのを感じる。 あの決断は間違っていなかった。 正しい決断には始祖の祝福というべき幸運が付いて回るのだ。 それを彼は自分の身で確信していた。 不意に、彼の隣に付き従うルイズが立ち止まった。 「どうしたんだい、ルイズ?」 ワルドが驚きながらも彼女の顔を覗き込む。 色を失った硝子のような彼女の瞳。 そこから一筋の雫が零れ落ちていた…。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3650.html
前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 「隊長殿! ミスタ・ジャン・コルベール! 本当に久し振りだ!! しかし一体、今まで何をしていた? 貴様の噂を聞かなくなって、もう20年だぞ?」 冬の日の出前、大気は寒い。だが『火の塔』の傍らで、メンヌヴィルは熱く、狂ったようにまくしたてる。 「俺の噂は聞いているだろう? どれだけ俺が人を焼き殺し、多くの都市や村を滅ぼし、見違えるほど強くなったか……」 「せ、先生。こいつ、ヤバイわよ」 キュルケが思わず呟く。奴は伝説の傭兵、『白炎』のメンヌヴィル。 火のトライアングルとしての実力は理解できるが、これほどの異常な、怪しい火の気配を感じた事はなかった。 メンヌヴィルはそれを聞き、鼻息を吹いて大いに驚嘆する。 「ふはっ! 先生、先生だと? あの『炎蛇』のコルベールが、か? これほど似合わん話はない! 確かにここは魔法学院だが、貴様がいったい何を教えるのだ? 人殺しの簡単なやり方か? 武器の鍛造法か? まさか料理教室を開いているわけではあるまい?」 コルベールは無言のまま、眉間の皺を深めた。頭の中には今まで読んできた、『東方』の優れた思想がある。 火の本質は破壊と情熱。とても強力で、かつ扱いづらい系統だ。 土メイジは土壌を肥沃にし、都市や城壁を築き、金属を錬金し宝石を加工し、ゴーレムを操って活躍する。 水メイジは河川や湖を治水し、航海や漁業を助け、雨を降らし泉を湧かせて農地を潤し、心身を治癒して命を救う。 風メイジは天候を操り空を飛び、フネを飛ばし情報を聴き取り、恐ろしい竜巻や稲妻、『遍在』を用いて戦う。 では、火はどうか。 戦いではトロール鬼をも焼き殺し、硫黄などの秘薬を用いて恐ろしい砲火を放つ。 有害なゴミを焼き尽くし、疫病の瘴気を浄化するのも、確かに火だ。 一方で火は森を切り拓き、草木を焼いて土壌を肥沃にし、金属を熔かして精錬加工する。 炉に火のない家では料理も不味く、夜は暗闇に包まれ、冬場は凍え死んでしまうだろう。 火は罪深い戦争で使われるのみならず、暮らしを豊かにしている。貴族よりも平民の方が、それを理解できよう。 火は、文明そのものだ。全てを焼き尽くす危険性を孕みながら、 よく制御すれば優れた科学技術となり、人類の未来を熱く明るく照らし出す。 それはいつの世も変わらない。火こそは太陽の光であり、命であり、社会を動かす原動力なのだ。 進歩への情熱と理性の光。それこそが、我々に与えられた松明だ! 啓蒙と、教育。おおこれこそ、私に与えられた使命ではないか!! ついにコルベールは口を開き、眼鏡をギラリと光らせ、自らの理想を情熱的に話し始めた。 「……そう、火の本質は、破壊と情熱。この戦乱の時代、破壊ばかりが強調されるのはやむを得まい。 だが建設的な使い方をすれば、火の系統は他の如何なる系統より勝るかも知れない。 それは古い世界を改革し、無知の闇を松明で照らすように、新しい『理性の光』の時代をもたらすだろう!」 「「……はあ?」」 「火の鳥、フェニックスを知っているかね? 500年に一度、火の鳥は故郷に帰り、 わが身を炎で焼いて灰の中から復活するという。そこのキュルケくんの使い魔はサラマンダーだが、 これも欲望や苦難の炎に耐えて生命力に換え、汚れた金属を浄化するという……」 しかしメンヌヴィルもキュルケも、タバサもアニエスも、コルベールの話にまったくついて行けない。 戦いの空気が学院の講義でのそれに変わり、延々と熱苦しい演説は続いていた。まるで松下が彼に乗り移ったようだ。 やがて、しびれを切らしたメンヌヴィルが叫ぶ。 「何をごちゃごちゃぬかしてやがるんだ、学問のし過ぎで頭がいかれちまったか!? 俺は貴様と戦って、火炙りにしてやりたくてウズウズしているんだ! さっさと攻撃して来いよ! さあ!!」 コルベールは演説を止め、フルフルと首を横に振った。 「メンヌヴィル、私はもう二度と、人殺しはしたくない。たとえ異端の罪で火炙りにされても。 火の系統を破壊だけに用いるのは、間違っている。あの日から20年間、私はそう思って研究を続けてきた。 もうすぐそれが、現実味を帯びた実を結ぶかもしれないんだ」 「くそっ、坊主が生悟ったような事ばかり言いやがって、俺にはさっぱり分からん! もう任務なんぞどうでもいい、貴様を焼き殺せりゃあ俺は満足だ!!」 メンヌヴィルが杖を振るって炎を放ち、それをキュルケとタバサが魔法で掻き消す。コルベールも仕方なく杖を抜く。 いよいよ決戦だ。アニエスは拳銃に弾丸と火薬を込めると、後ろに下がった。 「奴らが、私の仇。ダングルテールを、故郷を、家族を焼いた奴ら」 《人間ってやつぁ、どうもやたら苦しんでおりますな。 この星のちっちゃな神さまは、いつもいつも妙なことばかり、それこそ天地開闢の日このかた繰り返しております。 ほんとうは、もっとましな生き方もできたんでしょうが、旦那(造物主)がお天道様のかけらなんぞ分けてやるからですぜ。 そいつを理性とやら名づけて振り回したあげく、犬畜生よりもっとひどいことをやらかす始末でさぁ》 (ゲーテ作『ファウスト』天上の序曲でのメフィストのセリフより) 一方、本塔のあった辺りでは、オスマンの操るスフィンクスが暴れていた。 フーケの巨大ゴーレムが、スフィンクスの放つメガトンパンチで叩き潰される! たまらず空を飛んで逃げ出すフーケに、スフィンクスはぷーーっと砂を吹きつけた! 砂は空中で身長何メイルものオールド・オスマンになり、尻でどすんとフーケを押し潰す! しかしフーケもさるもの、咄嗟に地面に穴を空け、地中に逃れた。 そこへバックベアードが大声で呼びかける。 「「こっちを見るのだ、オスマンじじい!! 私の『魔眼』にはいかなるものもかなわぬのだっ」」 「「わはははははは、ワルドに取り憑いちょる妖怪とやら、そんな大目玉で何をしようというんじゃ? 砂を吹きつければ、お前さんなぞひとたまりもないじゃろうが!!」」 ベアードにぷーーっと砂が吹きつけられる。だがベアードは煤煙となって霧散し、しゅるしゅると分裂する。 そしてたちまちスフィンクスの周囲に、5つの巨大な『魔眼』が出現したではないか! 「「我が『魔眼』の遍在、ようやく出せるようになったぞ!! そして食堂の奴らは、この私が催眠術で操ってくれよう!!」」 5つの『魔眼』はばらばらと無数の小ベアードに砕け、食堂へ殺到する! 「「させぬわあっ!!」」 スフィンクスも大量の砂塵に変化し、ごおおーーーっという砂嵐となってベアードどもを吹き飛ばす!! 再び合体して大魔眼となるバックベアードは、ぴかぴかと眼を光らせ、激しく笑い出した。 「「うわはははは、手ごたえのある相手は大好きだ! 今度は貴様に取り憑いて、女子生徒の私生活でも覗いてくれようぞ!!」」 「「このセクハラ妖怪が、うちの学院の女性にセクハラしてよいのは、このオールド・オスマンただ一人じゃああああ!!!」」 オールド・オスマンとワルド・ベアード、セクハラ妖怪スクウェアメイジの戦いは、どんどん激しさを増していく。 それにしてもその言動は、極めて不純であった。 「……付き合いきれないね、任務は失敗ってことにして、あたしはさっさとアルビオンに帰ろう。 テファたちも心配しているだろうしさ」 フーケ(マチルダ)はいち早く学院の外へ脱出し、一路ラ・ロシェールへ向かう。 変装してアルビオン侵攻軍への慰問団にでも紛れ込み、故郷サウスゴータへ行くつもりだ。 クロムウェルに仕えるのも、そろそろ潮時だろう。さあて、どうしようか。 その頃、コルベールたちはメンヌヴィル一人に苦戦していた。もうすぐ日の出だ。 「おいおいどうした、この程度か? まだまだ物足りないぞ? やはり人間の焼ける香りを吸わないと、俺の渇きは癒されないのだなあ」 「くっ、こいつ、強い!」 コルベールは防御シールドを張るのに徹し、その背後からキュルケとタバサが魔法を、アニエスが銃弾を放つ。 だが、魔法はメンヌヴィルの周囲で拡散し、銃弾もプチュッと蒸発する! 「ぐわはははは、効かないねぇ!! そおら『炎の蛇』を食らえ!!」 ぶおんと鉄の杖が振り回され、巨大な炎の帯が四人を襲う! 敵の放つ強力な魔法を防ぎながら、タバサは冷静に戦況を分析する。 「通用しない、というより、魔法を『吸っている』。 何らかの強力なマジックアイテムを所持しているか、『先住の魔法』の可能性がある」 「何それ、反則よ!! それになんか、あいつの周囲の空気が青白く見えるわよ!?」 「怒りの顔色と同じように、火は高熱になるほど、色が白く、青くなる。 あれは恐ろしい高熱の炎だ。情熱の赤は、まだまだ『微熱』というところだね」 「ご教授有難いわ、ミスタ・コルベール。不殺でいいから、あいつをどうにかしてよ!!」 「……では、炎には炎、杖には杖。出でよ『炎蛇』、トピ・テイ・バ・テア!!」 コルベールが懐からもう一本の杖を取り出し、地面に投げる。 すると杖はたちまち、体長20メイルはある巨大なキングコブラとなった! その体は滑らかな緑色の鱗に覆われ、眼や口からはチロチロと炎が出ている。 『私は、太陽神の娘にして額の聖眼、王者(ファラオ)の象徴、毒の炎にて悪を焼く偉大なる蛇。 私は「立ち上がるもの」、ウラエウスなり』 《アロンが自分の杖をファラオとその家来たちの前に投げると,それは大蛇となった。 そこでファラオは賢者や魔法使いたちを呼び出し、彼らもその魔術によって同じ事を行なった。 …しかし、アロンの杖は彼らの杖を呑み込んだ》 (旧約聖書『出エジプト記』第七章より) 「せ、先生! これが先生の使い魔!?」 「私はとある魔術結社に所属していてね、団員になるとそこから使い魔というか、『守護天使』を1体もらえるんだ。 彼女は私の守護天使、聖なる炎蛇ウラエウスちゃんだよ」 『私を「ちゃん」などと呼ばないで、ミスタ・コルベール。 けれど、危ないところでしたね。おお、なんという邪悪な男と戦っているのでしょう!』 ウラエウスは、がーーーーっと大きく口を開き、毒牙を光らせる。 『私の一番好きな食べ物は、お前のような神を冒涜する人間なのだ!』 「うおおッ!?」 メンヌヴィルの頭上からウラエウスが襲い掛かり、炎をものともせずに頭から丸呑みする! 彼女はぺロリと敵を平らげ、腹の中に収めてしまった。メンヌヴィルはなおも暴れていたが、やがて消化されたか、静かになる。 「……案外、あっさり片付いたわね」 「人殺しはしたくなかったが……まぁ、彼は魂を悪魔に売り渡したような男だったしなあ」 満腹したウラエウスは振り返り、コルベールに話しかける。 『ミスタ・コルベール。私はあなたの忠実な下僕、というわけではない。 あくまでもあなたを守護するために付けられた、目付けのようなもの。しかし、これだけは伝えておきましょう。 あなたは「東方の神童」松下一郎に、使徒の一人として召されている。彼に仕え、従いなさい。 そうすればあなたの罪は贖われ、共に天の国、パラダイスに入る事ができるでしょう』 「使徒……天の国……この、罪深い私が……」 「そうだ。貴様はわが故郷ダングルテールを焼き、罪なき人々を殺した大罪人。 命令を下したリッシュモンを殺す事は陛下から止められたが、私の気はおさまらぬ」 コルベールのすぐ背後に、いつの間にかアニエスが立っている。手に拳銃を握り締め、彼の後頭部に当てている。 「アニエス!」 「狡猾な蛇め、まむしの子め! こんな穴ぐらに身を潜めて、くだらん研究に耽っていようとはな!! きさまも善悪をわきまえる知恵はあろう、潔く死ね! ジャン・コルベール!!」 《お前はこの事をしたので、全ての家畜と全ての野獣のうち、最も呪われる。 お前は、腹で這いまわり、一生塵を食らうであろう。 私は敵意を置く、お前と女の間に、お前の子孫と女の子孫の間に。 彼はお前の頭を砕き、お前は彼のかかとを砕く》 (旧約聖書『創世記』第三章より) 咄嗟にキュルケとタバサが飛びかかり、間一髪アニエスを地面に押さえつける。 ウラエウスも、かーーっとアニエスに牙を向けた。 「アニエス! 私たちがいる限り、先生は殺させないわよ!」 「貴女の気持ちも分かる。でも、理性的に考えて」 「やかましい! きさまら安穏と育ってきた貴族の小娘なんぞに、私の何が分かる!!」 「私は安穏と育って来ていない。貴族もいろいろ、人生もいろいろ」 「そんな言葉で片付けられてたまるかああ!! 私の、私のこの20年間の労苦は……」 二人に押さえつけられ、半狂乱になるアニエス。やがてコルベールは目を閉じ、諦めた表情をする。 「いや、分かっているよミス・アニエス。私はやはり罪人だ。 ここで君に会ったのも神の裁きだろう、潔く復讐の銃弾を受けて贖罪としたい」 「せ、先生! そんな」「………!」 だが、ウラエウスの様子がおかしい。 『……うっ、ぐっ、これは何だ?! 私は何を呑み込んだのだ?!』 げっ、とウラエウスは何かを吐き出す。それはメンヌヴィルの死体ではなく、なんとも奇怪で異様な姿をしていた。 体は青黒い狼、頭はフクロウ、クチバシには牙が並んで火を吐き、後脚がなくて下半身は大蛇。 キュルケがうえっと口を押さえる。こんな出鱈目な幻獣は見たことがない。 「な、何これ!? まさか、悪魔!?」 《カム ナガ ラ ナム ア モ ン》 怪物の全身が炎に包まれ、空中に飛び上がって咆哮する! 《高く立ち昇る、芳しい供物の煙(ハンモン)よ!! おお、余は何者か!? 余は風、余は息吹、余は隠されたる、計り知れぬもの……》 ウラエウスが叫び声をあげる。 『あ、あなたは、アモンさま! エジプトの主なる神!』 彼こそはアモン、炎の侯爵、東方の王にして神の神。シリアではバアル・ハンモン(アンモン)と呼ばれた。 本来はテーベという都市の古い神に過ぎなかったが、さまざまな神々を『吸収』して最高神の地位に就いた。 のちに悪魔として地獄に落とされ、多くの魔神とともにソロモン王に使役された末、封印された。 今は同族のベリアルによってハルケギニアに召喚され、メンヌヴィルに取り憑いていたようだ。 《おお汝ら人の子よ、余は『東方』へ、日の昇る地へ行く! 余は太陽なれば! 知られざる、隠されし知識を追い求めよ! 『東方』の彼方、『神の門』へと!!》 炎を吹き上げ、ギャアギャアと騒ぎ立てるアモン。フクロウも蛇も知恵の象徴、しかし彼は狂っている! 狂った神アモンは、呆然とする一同を尻目に、暁光の差す『東方』へと飛び去った。 闇夜は過ぎ去り、バックベアードも敵わぬと見て退却したようだ。学院での攻防戦は、終わった。 「……あの、何? 何がどうしてどうなってるの? ひょっとして、アレがフェニックス?」 『いいえ。あの方こそは、偉大なる神アモンの堕とされし姿。 全知全能の神でありながら、唯一絶対の神とはなれず、地の底へ堕とされた古代の神。 けれど、あのお方は「東方」へ、「聖地」へ向かわれた』 「『東方』か。……まさか、『東方の神童』つながりですかな?」 『おそらくは。あの邪悪な男に取り憑いていたせいか、少しおかしくなっておられたようですが、 あの方が「東方の神童」の敵となるか味方となるかは、私にも分かりません』 アニエスは深く溜息をつき、立ち上がって拳銃を収める。気を削がれたし、ここで殺すのもなにかとまずい。 「……コルベール。復讐の権利は、ひとまず保留しよう。武人の礼だ。 火は破壊ばかりとは限らないし、私の武も殺しのためだけにあるのではない」 「武人としての礼儀、有難くお受けしよう。やはり私は、まだ死ねない。 この世界にあの太陽のような理性の光をもたらし、あらゆる人間のための理想郷を実現する時までは……」 『東方』から朝日が昇る。その輝きは、コルベールの禿頭をまばゆく照らし出した。 そこへ、オスマンがふわりと降りてきた。 「それではおぬし、永遠に死にきれんぞい、ミスタ・コルベール」 「オールド・オスマン!! ……どうするんですか、この惨状を!!」 学院の建物は、妖怪との決戦でボロボロだ。というか、スフィンクスによる破壊が大半を占めている。 「かーーっ、うるさいのう。わしが責任持って元通りに修復しておくわい! あのスフィンクスがなければ、おぬしらここに生きておれまいぞ。随分創造に手間はかかったがのう」 スクウェアメイジとはいえ、あれだけのパワーはそうそう振るえない。ベアードは強敵だ。 下準備をしてホームグラウンドに引き込んで、やっと撃退できたというところだった。 「それから、学院はしばらく休校じゃ。おぬしらにも休暇をやるから、じっくり研究に励みたまえ。 わしは千年王国も理想郷もどうでもよいが、夢は見れるうちに見ておきなさい。 ……ああ、だいぶくたびれた」 ふらふらとオスマンが膝をつく。一方キュルケは、コルベールに熱い視線を向けた。 「ねえ先生、いいえ『ジャン』、ゲルマニアへ来ない? 火と情熱と技術の国、新しくて熱気に満ちた国よ! 資金はツェルプストーからも出すわ。 それに『東方』へ行くのなら、ゲルマニアが一番近道じゃない!」 「ふうむ、ゲルマニアか。……確か『薔薇十字団』もゲルマニアから……」 希望に燃えるコルベールの懐で、ルビーの指輪が熱を帯び始めていた……。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4881.html
前ページ次ページゼロのロリカード 学院から早馬を飛ばしてルイズとアーカードは王宮へときていた。 アンリエッタ姫殿下直々の出陣という報を聞いたので、ルイズはいてもたってもいられなかったのである。 既に戦の準備は始められており、王宮内もそれに呼応するかのように張り詰めていた。 いよいよもってアンリエッタ直々の出陣もありえないことではないとルイズは思う。ならばせめて傍に控え、 お支えするのが自分の務めと考えていた。 前回の強引に通行した一件からか、話は通してあったようで、名を名乗るとあっさりと門を通された。 戦の準備が進められてる中、ルイズとアーカードは中庭を歩いていると見知った顔を見つける。 アーカードは爽やかに笑いその人物に手を振った。 視界の端に少女を捉えたマンティコア隊隊長、ド・ゼッサールは苦い顔をする。マザリーニ枢機卿に説明されたものの、恥を掻いたことには変わりない。 少女二人を呆気なく通してしまったということ。その不甲斐無さにマンティコア隊全員、自身のプライドが許せなかった。 手を振っていたアーカードはすぐにルイズに引っ張られる。 「はいはい余計なことしないの、とっとと行くわよ」 「りょ~かい」 ◇ 「姫さま・・・」 「ルイズ、会えて嬉しいわ」 部屋に通されると、アンリエッタは今まさに出撃準備をしているようであった。国を守る為、士気を高めアルビオンに打ち勝つ為に。 「やはり・・・姫さま自らご出陣なさるのですね、なれば私をお傍に・・・」 「ルイズ・・・・・・ありがとう、あなたが傍にいてくれればそれだけで心強いわ」 アンリエッタはすんなりとルイズの申し出を受け入れた、内心はやはり不安なのだろう。 ルイズはもう一人いる金髪で青い瞳の剣士風の女性に目をやった、すぐにその視線にアンリエッタが気付く。 「そういえば紹介がまだでしたね、彼女は新たに設置した『銃士』隊の隊長アニエスです。私直属の護衛を務めてもらっています」 アンリエッタの言葉の後、アニエスという名の女剣士は一歩前へ進み出てお辞儀をする。 「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランです」 軍人気質の一つ一つに無駄がない動作でアニエスは自己紹介をする。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。よろしく、アニエス」 「はっ、よろしくお願いします。ラ・ヴァリエール殿のことは姫殿下から、かねがね聞き及んでおります。今後様々な形でお会いすることになるでしょう」 次にルイズに目で促されたアーカードが名乗る。 「主人ルイズの従僕、アーカードだ」 「アニエスです、アーカード殿。あなたのことも姫殿下から聞いております」 「・・・ほう、なんと?」 「ええ、なんでも恩人だと」 アーカードはアンリエッタの方を見る、アンリエッタはにこやかに笑った。その様子にアーカードもフッと笑みを浮かべる。 概ね紹介も終わり、アンリエッタは出撃の為の準備を再開し、ルイズ達はアニエスから現状を聞くことにした。 現在トリステイン一国のみでアルビオンという大国と戦わなくてはならない状況、さらには既に劣勢の立場にあるということ。 アルビオンは突如として宣戦布告同時攻撃を敢行、矢継ぎ早に軍を侵攻させてきた。 これに対抗する為に急遽出撃したトリステイン艦隊は、準備の足りなさと敵旗艦の長射程の砲撃に出鼻を挫かれ、大打撃を受けた上で一時撤退。 その長射程の大砲を持つロイヤル・ソヴリン級『レキシントン』号を旗艦とした、アルビオンの先遣艦隊は現在示威行動に入っている。 さらにアルビオンの本艦隊も既にラ・ロシェールに展開しつつあった。トリステインには艦隊を二手に分けてまともに戦えるほどの余剰戦力はない。 示威行動に移っている先遣艦隊は、王都すらその侵攻圏内に入っている。当然これを放置することはできない。 しかしアルビオン本艦隊を後回しにすれば、国土を蹂躙されるのは目に見えている。 既にゲルマニアに使者を送り援軍要請の旨を伝えたのだが、未だ軍備が整っていないとの話である。 結果ただでさえアルビオン艦隊と比較して戦力の少ないトリステイン艦隊を、二つに分けるのも止む無しいう結果に至る。 アンリエッタの出陣も苦渋の選択であった。アルビオン本艦隊相手に王女率いる大いに士気を上げたトリステイン艦隊でなんとか食い下がる。 先遣艦隊とぶつかる方は布陣を展開、とにかく余計な動きを取らせないよう時間を掛ける。 あとは正式にゲルマニアの援軍がくるまで保たせるのが目的である。 ゲルマニア艦隊との挟撃の形になればさしものアルビオン軍とて長期決戦を持するとは思えない、戦力も風石も支援にも限界があるだろう。 同盟を組む国とはいえゲルマニアには余計な負担をかけさせる以上、トリステインには相応の代償を求められるだろう。 だがそれでもアルビオンに降伏するよりはいい、現在のアルビオンはゲルマニア以上に不明瞭で何を求めてくるかわからない恐ろしい敵である。 突然の宣戦布告、そしてその直後に艦隊を侵攻させるというほぼ不意打ちとなんら変わらない暴挙に出た国である。決して負けるわけにはいかない。 「クックック、まるで幽霊船だな。そして・・・ははっ、なんとおあつらえ向きなんだ」 戦況を聞いたアーカードはクスクスと笑う、その意図するところは本人にしか分からなかった。 その様子にアンリエッタは怪訝な顔を浮かべる。ルイズは思った、またアーカードはなにかとんでもないことをしでかす気なんじゃないかと。 「どうしたの?なにがそんなに面白いわけ?」 ルイズは問い掛ける。アーカードがおあつらえ向きと言って笑ったのだ、何か意味があるのだろう。 「示威行動をしている艦隊、そちらは私がなんとかしよう」 当然その場にいる者達はアーカードの言葉に驚く、いきなり何を言い出すのかと。 「たった一人で?いくらアンタでも艦隊を相手にするのは不可能でしょ」 ルイズの言葉にアーカードは首を振って否定する。 「SR-71は飛ぶ、コルベールが燃料を作ったからな。強力な対空ミサイルでもない限り、成層圏ギリギリをマッハ3以上でフッ飛ぶ超音速高高度偵察機を落とすことなどできはしない」 アンリエッタは心底わけがわからずアーカードの言葉を聞いていた。 ルイズも半信半疑な状態であった、あの金属の塊が本当に飛行するなんて。そして飛ばしたところで何をどうなんとかするのか。あとミサイルってなんだろう? 「尤も距離を考えれば高高度超音速で飛ばす必要性はないし、空中給油できない上に余分な燃料もない。だが普通に飛行しても、大砲程度じゃ到底捉えることなどできんから支障はない」 「申し訳ありません、仰ってる意味がよく・・・」 アンリエッタが言う。アーカードはポリポリと頭を掻く、どうやって説明したらいいのだろうか。 一貴族の一使い魔の意見一つで、トリステイン軍の動きを決定させるなんて。相応の根拠を提示されない限り納得できるものではないだろう。 しかし説明のしようがない。SR-71を見せてる暇もないだろうし、飛行機一機で敵艦隊を倒すなんて言っても到底信じられる筈もない。 「アーカード殿、先程から何を言っているのだ」 アニエスは鋭い目でアーカードを見据える。 「なんだ?」 「わけのわからない言葉を並べ立て、姫殿下を無闇に惑わすのはやめていただきたい」 「よいのです、アニエス。彼女は何か思うところがあって我々の力になってくれると言っているのですから」 アンリエッタはアニエスを窘める。 「しかし・・・いえ、口が過ぎました。無礼をお許しください」 アニエスはすぐに冷静になる。アンリエッタの大切な友人とその使い魔であり、姫殿下自身が信頼を置いた相手である。 思わず感情的になってしまったが、アンリエッタに制された以上、それ以降自分が差し出がましく口に出すことではない。 アーカードはその様子を静観しつつ、思考を巡らせていた。 「ふむ・・・そうだな、やはり殿下は普通に出撃してくれて構わん。トリステイン艦隊を二つに分けるのもいいだろう。 考えてみれば燃料不良で飛ばない可能性もないとは言えん。私は私で勝手にやらせてもらおう、終わったら援軍に向かう。ルイズ、命令をくれ」 「よくわかんないけど、本当に大丈夫なの?」 「無論だ、ちなみに複座型だが主は乗せられん。やることは特攻によるオーソドックスな攻城戦、そして只只一方的な虐殺だ。もし飛ばなかったらすぐに主達に合流しよう」 アンリエッタ達には未だ理解不能の内容だったが、進軍内容に変更は無いようなのでよしとする。 アーカードにはアーカードの策があるようで、成功すればよくわからないけど、こちらに有利に働くということだけは把握した。 「・・・わかったわ、私は姫さまのお傍にいる。アーカード、あなたはあなたで我々に敵対する勢力を打ち倒しなさい」 「了解、我が主」 ――――アーカードは既に学院に戻り、いよいよアンリエッタ指揮の下、トリステイン軍は出撃することとなった。 「・・・ルイズ、私は不安です。あなたがいてくれなければ、きっと重圧で押し潰れていたかもしれません」 ユニコーンに跨り、アンリエッタは隣で馬に乗っているルイズに心の内を明かす。 「ご安心ください、役に立たないかもしれませんが私は姫さまを精一杯お支えします。・・・・・・正直に言えば私も怖いです。でも、信じられるものがあります」 「アーカードさん、ね」 アンリエッタは微笑む。 「はい、アーカードと出会ってからまだ二ヶ月程度ですが・・・大丈夫だと思います。そりゃあ時々私に逆らうし、からかうし、遊ばれたりもしてますけど・・・」 ルイズは目を瞑る。 「それでも私が信じる、私の使い魔です。アーカードはいつだって有言実行をし、私を支えてくれました。だから私も負けられません」 「ふふっ、貴方達には助けられっぱなしです。・・・本当にありがとう」 アンリエッタは大きく一度だけ深呼吸をした。 「では、行きましょうルイズ」 「はいっ!」 アンリエッタは前を向く。国を民を守る王族として、親友とその使い魔に負けない為、強く生きるというウェールズとの約束の為。 ルイズは前を向く。姫殿下を守り支える為、いつだって自分を助けてくれる使い魔に笑われない為、己が歩み進む道程に後悔しない為。 ◇ 「コルベール、飛行の準備だ」 アーカードの突然の話にコルベールは戸惑う。 「え?は?今からですか?」 「そうだ」 アーカードはJP-7の入った樽を軽々と持ち上げる。 「燃料は私が運ぶ、コルベールはテントを撤去しといてくれ」 「あ・・・はい、わかりました」 コルベールは困惑したまま研究室を出てSR-71の元へと向かい、アーカードは樽を一旦外へとその全てを運び出す。 積み上げた樽を一気に持ち上げ、絶妙なバランスでSR-71が置いてあるところへと歩いていった。 「戦争に・・・行くのですか」 「んむ」 アーカードは簡潔に一言で肯定した、コルベールはなんともいえない顔になる。 「SR-71はあなたの物ですし、私にどうこう言う権利はありません。研究も大方終わりましたし、飛行するのも是非この目で見てみたい」 燃料を入れ終えたアーカードは計器類をチェックしている。 「ですが・・・戦争は、反対です」 アーカードが首を傾けながらコルベールを見る。 「私は好きだぞ」 薄く笑みを浮かべながら言う。コルベールはその言葉でさらに険しい顔になった。 「そんな顔をするな、私は吸血鬼だぞ。貴様よりも遥かに長く生き、幾つもの戦争をしてきた化物だ」 「そう・・・でしたね」 コルベールは煮え切らない態度を見せる。 そう、彼女は吸血鬼。それはSR-71を研究し始めてから数日経って聞いた話である。 アーカードの世界の話を聞いた時にカミングアウトされたこと。当然驚いたものの、異世界の話を考えればどうということはなかった。 「・・・なんだ、お前はこの私に戦争の無意味さでも説く気か?」 「いえ・・・そういうわけでは・・」 アーカードはまた計器類を見始める。特に問題も見当たらない、これなら飛べると確信する。 「ふっ、悩め悩め。若者らしくの」 もういい年であるコルベールは若者と言われ苦笑いを浮かべる、目の前の少女にとっては自分でもまだまだ若輩者ということか。 「あぁそれと、コレはもう戻ってこないからヨロシク」 「は?」 きょとんとしているコルベールにアーカードは続ける。 「コレは破壊槌だ。敵艦に打ち込むのでな、当然壊れる」 SR-71に使用される燃料のJP-7は発火点が低い為、トリエチルボランを始動とアフターバーナー点火に使用する。 特に問題もなくSR-71は始動され、そのエンジン音が響く。アーカードは満足げにうんうんと頷いた。 コルベールの情熱と錬金技術も大したものだと改めて感心する。 アーカードは窓越しにコルベールに手を振った、それに気付いたコルベールは会釈でかえす。 アフターバーナーに点火し、SR-71はどんどん加速度を上げ、遂には離陸した。 轟音と共に飛び立った黒い鳥、その姿に思わずコルベールは見惚れていた。 それが戦争に使われ、一度飛び立った以上もう二度と帰ってこないと言われたものであったが・・・・・・それを忘れさせるほどに荘厳で美しかった。 しかし次の瞬間、SR-71が光った。次の瞬間には炎のようなものが見える。 何事かと思ってコルベールは見つめていたが、しばらくするとまた元に戻った。 心なしか最初より深い黒に染まったような気がしたが、風竜よりも遥かに速いそれはすぐに見えなくなった。 ◇ 離陸して間もなく、加速度が高まってきたところでSR-71は炎上した。 やはり錬金で同じものを作るのは無理があったようで、燃料に引火したのである。 アーカードは嘆息をつく。元々錬金で作るという事自体に無理があったのだ、飛べただけでも及第点である。 「拘束制御術式、三号二号一号開放」 アーカードの影は瞬時にSR-71を包み込み、燃え上がる機体は黒に覆われすぐに炎は消えた。 「なにも、問題は、ない」 燃料に引火しただけ、クロムウェルでもどうしようもない重大な故障というわけではない。 ――――なら問題はない、飛行するのに何も問題は無い。 アーカードは足を組み、膝に手を置いた。端正な顔立ちを大きく歪ませて笑う。 「・・・・・・心せよ、亡霊を装いて戯れなば、汝、亡霊となるべし」 ◇ 順調だ、何もかも順調だ。 先遣艦隊旗艦レキシントン号に乗ったワルドはゆっくりと空を仰いだ。 既にアルビオン本艦隊はタルブの草原でトリステイン軍と交戦が開始されたらしい。 アンリエッタ直々の陣頭指揮の下、トリステイン軍はなんとか戦えてるという状態でしかない。 戦力的に見てもアルビオンが勝つのは自明の理である。あとはこちらに差し向けられている僅かなトリステイン軍を蹴散らすだけ。 その後は王都まで一気に攻め込んでもよいだろう、この艦なら・・・やれないことはない。 その時だった、ワルドに悪寒が走る。 ただの第六感でしかない、なんの根拠もない。しかし・・・・・・何かがおかしいことだけは、俄かに震える体が理解していた。 「何だ・・・!?何だこれは・・・?」 この心の奥底からナニカが滲み出る感覚、これは・・・以前にも味わったことがある。思い出せ、いつのことだ。 ――――――思い出す、そうだ。自分がトリステインを明確に裏切って、『レコン・キスタ』についたあの日。 そう、アルビオンで・・・ウェールズを殺した、あの時に感じたではないかッ!! 「あいつだ・・・あいつだ!!奴が来るッ!!」 ワルドは空を凝視する、何かが見える、空にポツンと確認できる黒い点。それはあっという間に大きくなっていく。 降下による加速度でSR-71はレキシントン号に衝突した。 それはもはや轟音というレベルではない。ワルドは吹き飛ばされ、強く船の端に叩き付けられる。 打ち付けられた所為で呼吸困難に陥る。必死に息を吸い、吐く。燃える異臭が鼻をついた。 レキシントン号は衝撃で大きく高度を落とし、傾くもギリギリのところで保っていた。 爆発し炎上したそれは、十字を描いていた。傾いた船は少しずつだがまた水平に戻っていく。 朦朧とする意識に活を入れてワルドはなんとか立ち上がった、一体何が起こったのか必死に状況を把握しようとする。 その時、燃え上がる十字架に人影を見る。ああ、そうだ・・・そうだった。あいつだ、奴だ、狂気の代弁者、混沌そのもの。 「裏切り者は、一度も許したことがないと言ったろう」 少女は笑う、ただ単純に、しかし明確に、敵意を向けて。 「・・・・・・アーカード」 ワルドは少女の名を呟く。そうだ、まだだった。奴との決着はまだだった。 だが、退くわけにはにはいかない。我が野心の為にも―――ここで引くわけには・・・いかないのだ。 「・・・決着を、つけよう」 知らず知らず笑みを浮かべその言葉を口にした自分にワルドは気付く、一体どのような感情が自分にそうさせているのかわからない。 あまりに突然にやってきた、その非現実的な光景の中で、ワルドとアーカードは睨み合った。 「さあ行くぞ、歌い踊れ、ワルド。豚の様な悲鳴をあげろ」 前ページ次ページゼロのロリカード
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4195.html
469 名前:比翼連理[sage] 投稿日:2008/01/18(金) 22 00 05 ID 0r9Vi4PN 「ん、ふぅ、んん……」 灯を落とした暗い部屋の中に押し殺した喘ぎが漏れる。 毛布にもぐって響きを抑えているはずのそれは、その中で反響する。 その内に篭った彼女の耳には、どうにも大きく聞こえて仕方ない。 この居室の外には、距離はわからないが、誰かしらが控えているに違いなかった。 その誰かに聞かれてしまったら……このような、いやらしい声を聞かれてしまったら、 一体どうなってしまうだろう。 もし、その誰かが、騎士の自尊心もない、若い男だったら。 その若い情欲のままに、おもうさま嬲られてしまうかもしれない。 それでも、下着に当てた指は湿った部分を強く押さえたまま、離せずにいる。 彼女の熱っぽい瞳は、なにか浮かんででもいるかのように、虚空をじっと見据えていた。 「く、ぅ……ウェールズ、さま……」 その名は、この唇で呼んではいけない名前。 もう……呼ぶことの出来ない名前。 アンリエッタの心は未だ、彼と共に在れた短い短い時の中にあった。 例えば、初めて出会った日。湖畔で誓った言葉。 その先の回想も、幸せで甘酸っぱい……忘れ得る事のない、素敵な思い出が続く。 自然、目元や口元がゆるみ、柔らかな微笑みが浮かぶ。 欲に染まった頬と潤む瞳を合わせれば、少女のそれというより、妖艶な笑みに見えた。 ……しかし、共に過ごせた幸せな時間は、ほんの僅かな時間のこと。 思い返していると、しばし後には彼の最期の瞬間に辿り着いてしまうのだった。 優しいパステルカラーに彩られていた世界は、そこで一転、凄惨な深紅に染まる。 アンリエッタはぎゅっと目を閉じた。……だが、その色はいつまでも消えない。 そもそも、アンリエッタという名の少女は、弱かった。 女王などという立場に立てるような気性ではなかったし、そのような立場になるなど、 考えたこともなかった。 その小さな掌には広すぎる街。この瞳に映すにはあまりに遠大な国土。 飢えと身分差に苦しむ平民。誇りを忘れた哀れな貴族。 真意の知れない外の国々。そして、今やどれほど憎んでも足りないレコン・キスタ。 王の冠という物は、まだ少女の色を残すアンリエッタには、あまりにも重かった。 あの日、重すぎる冠を振り捨てて、ウェールズと逃げると決めた時。 口でなんと言ったところで、やはり自分はどこかほっとしていたに違いなかった。 自ら、重責から逃げ出したわけではない。 自ら、この冠を投げ捨てたわけではない。 ……そう、愛しいウェールズの言動を、自他への言い訳にしなかっただろうか? 否とは、とてもいえない。 彼を思い返すと、終いにはそんな罪悪感と悲痛に苛まれた。 しかし、どんなに忙しく公務をこなそうと、彼を思わぬ日は一日とてなかった。 そんな日々はいつしか、心痛を手淫で慰めるという術を彼女に教えてしまったのである。 「あぁ……あふ……ウェー、ルズ、さまぁ……」 ただ強く押さえていただけの手は、いつの間にか撫でるような動きをしていた。 下着はいつの間にか溢れた淫液にぐっしょりと濡れている。 ただの罪悪感ではすまない。 自分はこのような浅ましく卑猥な行為に、彼を思い浮かべている。 誇り高く逝った彼を、こんな時に思っているのはなんと愚劣な事だろう。 そう思えば思うほどに、下腹の甘い疼きは増していく。 それがまた罪悪感にかわり、浮かんだ罪悪感は更に腰を疼かせる。 この行為はすでに無限回廊と化していた。 ……眠れぬ夜の眠れぬ理由は、一体なんだっただろう。 その境はいつしか溶け合い、今ではもう、どちらともつかないのだ。 すっかり熱く充血した秘芯を、指の腹でぐりぐりと押し潰し、アンリエッタは呻く。 ……声を、出してしまいたい。 いやらしい声を出して、そして、それから? わからない。どうなってしまうかなんて、わからない。 むしろ、どうなってしまうかわからないから、声を出したい? 「ぁ……っ、は、あぁ…………あぁんっ」 あと少し。もう少し。ほんの、少しだけ、大きく。 心の中の悪魔の囁きが、僅かずつアンリエッタを煽っていく。 それからふと、扉に意識を向けた。そこに控えている騎士は誰だろう、と。 ……意識の中に浮かんだウェールズが、霧がかかったように揺らいだ。 その髪と瞳の色が、トリステイン人には少ない、黒に変わる。 脳裏に浮かんだのは、幼馴染が喚んだ使い魔。 彼女の代わりに七万もの大群と戦い、一時は生死不明になった彼。 先日近衛騎士に任命した……才人の姿であった。 ルイズ・フランソワーズの傍にいるはずの彼が、ここを守っているはずがない……。 そんな冷静な判断は、すぐさまどこかへ飛んでしまった。 今にも意識が飛んでしまいそうなその瞬間、浮かんだのは安宿で才人の傍にいた時間。 ……それこそが、彼女を最後の一線まで押し上げる刺激になった。 「くぁ、んふぅ……さ、サイト殿……っ! ……あっ! あぁぁっ!」 快楽の荒波にびくびくと身を震わせる。 しかし、彼女が浮かべた表情は、淫らなそれではなく、愕然としたものであった。 未だ激しい呼吸に、はだけた胸が大きく上下する。 …………わたくし、どうしてしまったというの? ウェールズさまを忘れて、他の誰かを愛すると誓ったあの日から……まだ、どれほども たっていないというのに。 永遠に愛すると、そう誓っていたというのに。 このような時に思い浮かべるのは、手を許すという程度の事ではない。 真実このような関係になっても悪くない、と心のどこかで考えていなければありえない 事に違いなかった。 ……少なくとも、アンリエッタはそう思った。 本人も気づかぬ内の、大きな変化。困惑と恐怖に胸が苦しくなる。 今……今この時、わたくしが会いたいと望んでいるのは……誰? ウェールズさま? ……それとも……。 見開いた瞳の奥からは澄んだ雫が次々に溢れ、淫らな行為に上気した頬を零れ落ちた。 無数の死と贖えぬ罪が渦巻いた戦乱と、その後の多忙な日々……。 脆弱な彼女の心は緩やかに、しかし確実に軋み、歪みつつあったのである。 「……ずいぶんとお疲れのご様子だな、女王陛下は」 苦渋の表情を浮かべ、陛下の居室の前を守っていたのはアニエスであった。 異変に気づいて早々に人払いをしたのは、はたして正解だったようだ。 しかし、このような嬌声を聞き続けるのは、同じ女性の身にしても辛い。 室内の声に共鳴するように、下肢にじわじわと忍び寄った痺れを、気力で抑える。 それでもしばらくすれば耐えかねて、アニエスはまだ静かにならない部屋の前を離れた。 手近な窓に歩みより、桟にそっと指をかける。 そして、月をすっかり覆い隠してしまった暗雲を見上げた。 その光景はまるで、今の陛下を表しているようにアニエスには思えた。 切っても切れぬ縁の象徴とされる、夜空に並ぶ比翼連理の双つ月。 ……ならば、その片割れを失った月は、どうなるのだ? この空のように、残された月までも、暗雲に飛び込んでしまうのではないだろうか。 切っても切れぬというのは……逆に言えば、片割れのみでは存在できないという事だ。 片翼で飛ぶ鳥など、この世には存在し得ないのである。 ……貴殿はなぜ、生き延びてくださらなかったのだ。 このままでは何もかもが壊れてしまうかもしれませぬぞ。 陛下とて無垢な輝きを失い、冷徹な主君か、虚ろな操り人形と化してしまうやもしれぬ。 貴殿はそれでもよいとおっしゃるか? 貴殿はそれでも、王家の為、名誉の為に死んだ事は正しかったとおっしゃるか? ……答えを返そうにも、貴殿はもう、この世には在らぬのだな……。 会ったこともない、名と立場しか知らない彼に、心の中で問い続ける。 それから深くため息をついて、アニエスは頭を振った。 ……いや、私こそ、彼を理由として逃げようとしているのかも知れぬ。 今、女王陛下を守り支えるのは、我らのお役目ではないか。 ……そうだ。陛下は幾重にも重なるご心労にひどくお疲れなのだ。 この辺で一度、気分転換になる何かがあればよいが……。 窓の側をはなれ、再び部屋の前に戻ると、室内は静かになっていた。 これ以上彼女の痴態を耳にせずにすむと知り、アニエスはほっと息をついた。 ……アンリエッタがウェールズとは異なる名を呼んで果てたのは、ちょうどアニエスが 部屋の前を離れている間だったのである。 彼女の耳にそれが聞こえなかったのは、はたして幸いであったのかどうか……。 それは、スレイプニィルの舞踏会の、少し前の出来事。 (レスで頂いたご指摘を受けて、掲載時に一部修正。ありがとうございます。)
https://w.atwiki.jp/silver14/pages/15.html
1.村名 enjoy村 2.プロフィール (1)ハヤト村長 (2)カンタ (3)アニエス 3.夢番地とフレンドコード (1)フレンドコード Mii名 ハヤト コード 0001-4279-1231 (2)夢番地 1500-0438-6213 何か質問があればこちらまで enjoy村フレボ
https://w.atwiki.jp/kmpnote/pages/80.html
5時から7時までのクレオ 1961/仏 監督 アニエス・バルダ 脚本 アニエス・バルダ 撮影 ジャン・ラビエ 美術 ベルナール・エバン 音楽 ミシェル・ルグラン 出演 コリンヌ・マルシャン / アントワーヌ・ブール・セリエ / ミシェル・ルグラン/ ジャン・クロード・ブリアリ / アンナ・カリーナ 中盤から、ああきっと病気なんて、大したこと無いんだろうなって思うのだけど、もうそんなの初めからどうでもよくって、ただ「5時から7時までのクレオ」を映しているんだ、そんな映画なんだって妙に納得。「元祖女の子映画」なんてTUTAYAの「うたい文句」にはあったが、ちょっと大柄だし、女の子って言うには若くない気もしたけど、不安定な行動や、突然真剣に歌い出し、そうかと思えば罵倒し、気付けばランデブーって、やっぱり「虚ろぎ」な女の子っぷりであった。 パリのシャンソン歌手、クレオは自分が病気ではないかと不安に駆り立てられている。現在時刻は5時。彼女は自分が病気か否か、7時に病院から診断結果が出されるを待つ。そんな映画。 字幕で「5時13分から5時18分までのクレオ・・」などと場面が変わる度に出てくる。時間軸もほぼ現実の進み具合と同じ。これだけ並べると何とも実験的映画という感じだが、「あたり」はいたって軽い。それがまた楽しんでいるようで、素人っぽくって良いのだ。そしてパリを車で走るシーン。おもむろに街を行く人々がドキュメント的に映し出される。紛れもない現実の中を映画が突っ走っている臨場感がある。 様々に凝らした演出のディテールをかいくぐり、ちょっと物足りない気もするエンディング。だが「刻一刻」と移り変わっていくクレオの姿、それを感じ取るのがこの映画の楽しみ、そして魅力の全てだ。・・ミシェル・ルグランの歌にはちょっとジーンと来てしまった。 2002.07.22k.m カテゴリー-映画 関連リンク
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/5567.html
テンプルムの蘇癒 解説 円環魔法の一つ。 円環の力を利用した回復魔法。 雑感・考察 作品 分類・ランク 属性 種別 範囲・射程 効果 習得者・備考 珊海 - - 回復 全体 再生付与 アニエス(円環を奪えば他の主人公も使える) 封緘 円環、+3 神聖 回復 全体 HP300回復 ソーニャ 名前